懐かしいヒグラシの声に包まれて 2016年8月 刊発売
2016年8月27日 Profile : the Letters
皆様、残暑厳しい中、お元気にお過ごしでいらっしゃいますか?
聖母被昇天祭(Assomption, Maria Himmelfahrt, 8月15日)の翌日、私も Himmelfahren して、半袖では肌寒いパリから東京に参りました。運よく、北上する台風と擦れ違って、シャルル・ドゴール空港を出発する時にキャプテンが警告していた大きな揺れもなく、無事羽田にランディング。TV画面の飛行状況を見ていると、ハバロフスク上空も過ぎた辺りから確かに向かい風が強くなり、15分間で時速45kmから144km(日本式の秒速にすると12.5mから40m)まで上り、飛行高度は同じでしたが飛行機のスピードも 880km/h から 792km/h まで落ちていました。
台風との鉢合わせは、42年前、山と高層ビルが囲む海に突き出た滑走路がさながら航空母艦のようだった昔の香港空港を離陸した直後のエール・フランス機で落ちかかった経験があるので身構えていたのですが、今回、拍子抜けしたのは喜ぶべきでしょう。あの時は、強風を受けて、翼の先端は海面から5mまで落ち、機内は、ワー、キャーの大きな悲鳴。どうにか立て直して水平飛行に移った時には盛大な拍手が巻き起こりました。すかさず、キャプテンが「私はパリの環状高速道路で渋滞を擦り抜ける訓練を積んで居りますから、どうぞご安心下さい」とアナウンスし、美人のキャビン・アテンダントに「さっきは怖かったね」と言うと「えぇ、あれより怖い思いをした人は、もう何も語ってくれないからね」との返事で、フランス人の話術の巧みさに感心したものです。
今後共、どうぞ宜しくお願い致します。
東京にて、2016年8月
矢崎 彦太郎