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冬空のパリより 2016年11月 発売

Profile : the Letters

皆様、お元気にお過しでいらっしゃいますか?

11月1日、久しぶりにパリに戻ると、こちらはすっかり冬の寒空。1月下旬並の気温という日もあって、地球温暖化など、一体どこの星の話かと思います。11月初めに平地で雪を見るのは、44年のヨーロッパ生活で記憶にありません。勿論、積もる事なく、降るそばから溶けていきましたし、この数日は、どんより曇っていても12~13℃の日が続いて居ります。

〈雨月物語〉冒頭にある崇徳上皇の御霊と西行の対話シーンを基に丹波明氏が作曲された楽劇〈白峯〉奉納版をパリでヨーロッパ初演致しました。上皇と西行役のテノールとバリトンは日本人でしたが、伴奏アンサンブル全員とコーラスも半分近くはフランス人でテキストは日本語の擬古文と阿弥陀経。短いリハーサル中にあらすじを簡単に説明したところ、奏者の理解力が抜群で演奏は劇的に盛り上がり、フランス人が多くを占めた聴衆の反応も素晴らしく、読経の場面がピアニッシモで消え入り永遠の沈黙に吸い込まれる中、満員の会場全体が祈りの雰囲気に包まれました。昨年末、讃岐の白峯陵でパリ公演のお約束を上皇様と交わしたので、実現出来てほっとして居ります。

このコンサートの前後には「辻邦生-パリの隠者」展も学習院大学資料館と日本文化会館の主催で開かれて盛況を博しました。44年前、羽田発ジュネーヴ行きの機中で読み始めて以来、辻作品は常に手元にあって、感動と勇気を与えてくれました。辻氏の17回忌に当る本年、学習院と文化会館を仲介して、〈西行花伝〉私家本等、多くの貴重な資料が辻氏ゆかりのパリで展示の運びとなり、ほんの僅かでも辻氏に恩返しが出来たかと思っております。

今後共、どうぞよろしくお願い申し上げます

パリにて、2016年11月

矢崎 彦太郎

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