丁酉の年明けに 2017年1月 刊発売
2017年1月10日 Profile : the Letters
皆様の2017年が、更に一層輝く年になられますよう、心からお祈り申し上げます。
快晴に恵まれて暖かな新しい年の始まりを、今回も東京で迎えました。とは言っても、人生の3分の2近くを過ごしている海外、特にヨーロッパの動向は絶えず気になり、家内はインターネットでフランスのニュースをチェックしております。新年早々の物騒な事件の数々は、ヨーロッパ各国で今年に起きると思われる変革と動揺を象徴・暗示しているかのようです。
年末には学習院大学資料館へ参り、11月にパリ日本文化会館で開かれた「辻邦生-パリの隠者」展の「報告・お疲れ様会」に出席して、精神科医で作家でもある加賀乙彦氏と親しくお話をする機会に恵まれました。加賀氏はフランス留学の為に1957年、辻氏とマルセイユまで「カンボジュ号」に同船されました。お二人の留学生時代の逸話を伺い、昨年6月に上梓された〈殉教者〉について、また、イスラエルの想い出等をお話し致しました。自分の信仰のために迫害者に罪を犯させる「殉教」という行為はプーランク作曲〈カルメル会修道女の対話〉の原作であるベルナノスの台本と、その基になったル・フォールの作品や、遠藤周作氏の〈沈黙〉にも扱われたテーマで、奥深い問題を孕んでいます。映画化された〈沈黙〉が近々公開されるらしいので、どのように描かれているか、ぜひ見たいと思っております。
本年も何卒宜しくお願い申し上げます。
東京にて、2017年1月
矢崎 彦太郎