JL405の機上から 2011年10月 刊発売
2011年10月10日 Profile : the Letters
皆様、「暑さ寒さも彼岸まで」の言い伝え通り、ようやく涼しくなって参りましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますでしょうか?
昨日、東京シティ・フィルとティアラ定期のコンサートを致し、今朝成田を発って、2ヶ月半ぶりにパリへ戻る機中です。自宅と成田を往復する道筋に、またしても東京の醜悪さを象徴する様な塔が出現。辟易して居ります。大体、塔の美しさは、建っている足元がすっきりとして、遮蔽物が何もない大空をバックに屹立している点にあるのですが、ロケーションは最悪で、塔自体の設計も無味乾燥で、ただ高いだけ。クアラルンプールや台北のタワーと同じ、商業主義、物質主義が見え見えの現代の「バベルの塔」としか思えません。1889年のフランス革命記念万博に、科学、技術、美術の粋を集めて建てられたエッフェル塔は、ギマール設計による地下鉄入口等と共に、美しい近代建築の代表になりました。その為には、再三にわたるイルミネーションの変更や多くのメンテナンスが行われています。特に塗装は、全高324mを3つの部分に分け、グレーの色調を上に向かう程濃くグラデーションして、遠方から塔を眺めても、全体が、くっきり見えるように細かな細工が施されているのです。
11月11日の「フランス音楽の彩と翳」シリーズは、プルースト生誕140年にちなんで、彼と親交があったハーン、「失われた時を求めて」の作中人物である作曲家ヴァントゥイュのモデルと言われるフランク、ドビュッシーを取り上げます。当時の「ベル・エポック」的雰囲気を味わって戴ければ幸甚です。
ロシア上空にて、2011年10月
矢崎 彦太郎