秋のパリより 2012年10月 刊発売
2012年10月10日 Profile : the Letters
皆様、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?
2ヶ月半ぶりで、すっかり秋らしくなったパリに戻りました。1週間の短い滞在ながら、酷暑の東京、常夏のジャカルタで久しく忘れていたクールでドライな空気に触れ、自分の身体も軽くなったかの錯覚に陥ります。朝晩は5-7℃位ですのでアパルトマンには暖房が入り、晴れれば日中は20℃を越しますから、薄いセーターで散歩をするには最適な季節。今までに度々書きましたように、私が一番好きなパリの時候です。シャンゼリゼのマロニエは、もう葉が色づき始めましたが、仕事部屋の正面にあるマロニエにはまだ緑の葉が茂っております。
今年はドビュッシー生誕150周年ですので、11月3日の東京シティ・フィル、ティアラ定期では代表作の1つである<牧神の午後への前奏曲>を演奏致します。初期に書かれた10分、110小節の短い曲とはいえ、この作品によってロマン派から近代音楽への扉が開かれた音楽史上の重要なターニングポイントです。将来性豊かな若いソリストと協演するラヴェルのピアノ・コンチェルトの後は、自然と人間の和やかな交感への讃美を窺わせるベートーヴェンの<田園交響曲>です。昨今、自然の猛威ばかりが強調されておりますが、それを威嚇ととらえるか、万物を育むエネルギーととらえるかは、自然に接する人間側の問題としか思えません。人間の存在も、所詮は、自然の一部に過ぎないのですから。
コンサート終了後に、別紙の通り、今年の Yazaki et ses amis の会を開きます。今回は家内の篤子も出席致しますので、お目にかかるのを楽しみに致しております。ふるってご参加戴きたく、よろしくお願い申し上げます。
パリにて、2012年10月
矢崎 彦太郎