秋雨煙る日、シャルダンに再会して 2012年11月 刊発売
2012年11月17日 Profile : the Letters
皆様、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?
11月3日に開きました東京シティ・フィル第31回ティアラ定期と、演奏会後のYazaki et ses amis例会には、会員の方々が多数御参加下さり、誠に有難く、御礼申し上げます。ヴィジターとしてタイやインドネシアからいらした方や、久しぶりにお元気なお姿を拝見して、お言葉を交わすことが叶った方など、和やかで親しみ溢れる会でした。ただ、幼稚園から上智大学まで同級生であり、このses amisの会を立ち上げた時から御尽力戴いた濱口篤君の御奥様、セシリア久美子様が、前日の11月2日未明に帰天され、彼も今回初めて欠席されたのが淋しく、心から御冥福をお祈りいたします。音楽の守護聖人であるセシリアのお名前にふさわしい天上の妙なる響きを、いつまでもお楽しみ戴きたく存じます。
リハーサル、コンサートの合間に、東京・丸の内にある三菱一号館美術館で1月6日まで開かれているシャルダン展を覗きました。パリ・サン=ジェルマン地区で職人の家に生まれたJean Simeon Chardan (1699-1779)は、日本では余りポピュラーではないかも知れませんが、バルザックやリルケが言及し、特にプルーストは生命の最も内的なものと物体の最も深遠なものを結びつけたと絶賛しています。今回出展された38点の内、ルーヴルで見慣れた9作品以外は初体面のタブローが多く、大変興味深い展覧会でした。いつものように、まず順路通りにみてから逆行して完全に一往復した後、気を引かれた作品の前に佇んで、桃やブドウの描き方の変遷を辿ったり、テーブルからはみ出したナイフの角度の作品による違いとか、銀のゴブレの丹念な筆致を堪能して帰途につくと、何の変哲もない雨に濡れた夕暮の路さえも、とても美しくポエティックに感じられました。
今後共、何卒よろしくお願い申し上げます。
東京にて、2012年11月
矢崎 彦太郎