皆様、お元気にお過しでいらっしゃいますか？

先日、季節外れの台風襲来の日にスペインの作曲家グラナドスの生誕１５０年を記念するコンサートでオペラ＜ゴイェスカス＞を日本初演致しました。交通機関への影響が懸念されて、お客様よりも舞台上の人数の方が多くなるのではないかと思われる中を、予想以上の方々が、水捌けの悪い上野公園を横切って東京藝大奏楽堂まで、びしょ濡れになりながらいらっしゃったので、大変感激致しました。水攻めは、第１次大戦中にドイツの潜水艦に撃沈されて海の藻屑と消えたグラナドスの怨念かも知れません。

220頁のスコアで演奏時間約1時間というのは、オペラとしては短い方なのですが、今回の初演は、一次資料となる楽譜に不備な点が膨大で、走り書きのように不明瞭な譜面から考察を重ねて校訂するのに多くの時間を費やしました。古文書か暗号解読かといったレヴェルで、一部原曲となったピアノ組曲や声楽練習用のヴォーカル・スコアといった傍系資料も限られていて、明智小五郎か金田一耕助になった気分。本番前日にも印刷ミスが見つかり、何とかコンサートに漕ぎ着けました。

東京国立博物館の<運慶>展で数々の仏様のご尊顔を拝して気を落ち着け、山梨県北杜市の山びこホールとインドネシア・ジャカルタでのヘンデル作＜メサイア＞公演に臨みます。

今後共、何卒よろしくお願い申し上げます。

東京にて、2017年11月

矢崎　彦太郎