書斎の窓から 2019年6月 刊発売
2019年6月5日 Profile : the Letters
皆様、お元気にお過しでいらっしゃいますか?
下火になったとはいえ、Gilets jaunes(ジレ・ジョーヌ、黄色いヴェスト)のデモが毎週末に続き、EU議会の行方や、ノートルダム火災では出火から消防への通報まで15分もかかっていたらしいとか話題に事欠かないパリにも漸く初夏の兆しが見え始めて、日中気温が20℃に届く日々となりました。先日、ノルマンディーの友人宅を訪れた折に通過したエヴルーでは、街路樹のマロニエから紅の花が散り、歩道は緋毛氈を敷き詰められたようで、町の外に拡がる菜の花畑の鮮烈な黄色との見事なコントラストに目を見張りました。
今日の日没は9時45分頃。西の青空にたゆたう雲が9時過ぎから金色に煌めき始め、次第に赤みを帯びる光のグラデーションは10時を回るとグレーに移ろいます。向かいの元修道院に茂る樹々のシルエットが淡い藍色の空にくっきりと浮かび上がり、ベルギーの画家、ルネ・マグリットが描いた<L’Empire des lumieres(光の帝国)>を彷彿とさせます。一年の間で一番美しい夕暮れが臨める時期で、それは最高に贅沢な夕食後のデザートです。
今後共、何卒よろしくお願い申し上げます。
パリにて、2019年5月
矢崎 彦太郎