秋は深まる 2019年11月 刊発売
2019年12月18日 Profile : the Letters
皆様、お元気にお過ごしでいらっしゃいますか?
例年通り、10月最後の週末に夏時間から1時間遅らせて冬時間となりました。時間が変わる数日前、7週間ぶりでパリに戻った頃は、まだ青々と茂っていたマロニエやプラタナスの街路樹も、11月の声を聞いた途端に葉を落とし始めています。
日本からいらした親しい友人御夫妻を案内して、パリの南約600㎞に位置するミディ=ピレネー地方・アヴェロン県のコンク(Conque)と、コンクの北西120㎞でロット県に属するロカマドゥール(Rocamadour)を再訪しました。2011年早春に訪れたときは一泊で慌ただしかったのですが、今回は二泊三日ののんびりドライヴ。スペイン北西部のサンティアゴ・デ・コンポステルへの巡礼中継地として栄えたコンクの山里では、11世紀に建立された重厚なロマネスク様式のサントゥ・フォワ教会や修道院を見て回りました。アルヅウ渓谷北側で150mの断崖絶壁に12、3世紀の聖堂群と街並みが張り付いて奇観を呈しているのがロカマドゥール。洞窟のようなシャペル・ノートル・ダムにはケルトの土俗信仰からの影響と伝わる黒いマリア像が安置されています。作曲家プーランク(1899-1963)は友人を交通事故で失った直後にこのマリア様と対面してインスピレーションを受け、後期宗教的作品の萌芽となった〈黒いマリアへの連禱〉を作曲しました。
観光客が少ないオフ・シーズンに、中世から時が止まっている土地の霊を感得するのには、大いなる気分転換です。
パリにて、2019年11月
矢崎 彦太郎