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霜月の低い雲の下にて 2013年11月 発売

Profile : the Letters

皆様、お元気にお過ごしでいらっしゃいますか?

先日の<カルメル派修道女の対話>公演は、20回続いた<フランス音楽の彩と翳>シリーズの集大成ということでもあり、 ses amis 会員の方をはじめ、多くの方にお集まり戴き、盛大な拍手をお贈り下さいました。ソリスト、合唱団、オーケストラも一丸となって研鑽に励みましたが、特にオーケストラとのリハーサルに先立って行いましたピアノ伴奏による歌のリハーサルは、音楽面とフランス語発音の調整だけでなく、登場人物のキャラクターや心理状態を、和やかにディスカッションしながら進めた役作りが楽しく、演奏会形式ながら、オペラ制作の醍醐味ここにありといった日々でした。

ストーリーは、フランス革命時に16人の修道女が殉教した史実に基づいたもので、それは「物質主義・商業主義がいかに蔓延する火中にあっても、決して揺るがない精神の優位性」といったテーマとリンクしています。このテーマを眉間にしわを寄せたしかめっ面で語るのではなく、音楽の美しさを通して、明るく楽しく表現したいと日頃から望んでおりますが、今回は、極く僅かでも皆様に感じ取って戴けたかなと思いました。スコアの最終ページに書かれた、16人中最後にブランシュが事切れてからの、ゆっくりと静かで音の少ない7小節は、西行が描く三十一文字の世界にも似て、寂寞感が一種特異な充足感を伴って諦観へと移行し、時の今昔に関わらず、人間存在の根源を問う2時間半のドラマが、この30秒に収斂されていくさまを見守って下さった全ての方々に、心から、御礼申し上げます。

公演数日後に、パナソニック汐留ミュージアムで12月10日まで開かれている<モローとルオー: 聖なるものの継承と変容>展に参りました(水曜休館)。師弟関係にあった2人の合同展は珍しく、私はモローの<聖セバスティアヌスと天使>とルオーの<降誕>に強く惹かれました。以前、東京新聞からの依頼で雑文を書いたモローの<一角獣>は、別の構図の作品が来ていたので、来週パリのモロー美術館で旧知の<一角獣>と再会しようと思って居ります。

今後共、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

東京にて、2013年11月

矢崎 彦太郎

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